午前7時50分――

「イッテキマース」と言って
家を出て行ったハズの旦那が
突如玄関前で吠え出したのには
さすがの私も度肝を抜いた。

「何してンノ!?
早く持ってキテヨ!」


私は小さな目をしばたかせる。


何のお話?


「ランニング・ウォッチ
取りに行ったんデショ?」



何のお話?
パート2。



急いでいるのであろう旦那に
なぜかしつこく問い詰められる。

「デハ、ナゼ、キミは
寝室に入って行っタ!?」


逆に寝室に入ってはならぬ
理由でもあるのか。

なんだか良く分からないが
自分は靴を履いたから
寝室に忘れた腕時計を
持って来て欲しいとの事。

私は「はいはい」と
彼をなだめながら
昭和のお母さんの如く
いそいそと腕時計を運んだ。

それを無言で受け取ると
旦那はさっさと車に乗り込んだ。


嵐が去ったと言わんばかりに
私は速やかに玄関の鍵を閉める。

すると、踵を返した
絶妙なタイミングで
チャイムが鳴った。


振り返るとそこに
また旦那(白目



これがドッペルゲンガーでなければ
ウチの旦那には
3人程影武者がいるのだろう(真顔

2人目の影武者は
一体何をご所望なのか
密やかに気になったので
玄関を開けてみる。


「財布がナイ!」


そう叫びながら靴を脱ぎ散らかし
家に入って来た影武者その2。


彼は
靴を脱ぐ派らしい(真顔



しかしその後
なぜか総司令官の如く
探す場所を私に指示しては
床を這いずり回る嫁を
見下ろすだけ。


いや
お前も探せや。



デスク下、ベッド下と
隈なく探すが
ブツはなかなか見付からない。

すると、影武者その2から
脱ぎ捨てられているズボンの
ポケットの捜索を命じられる。

影武者総出で探せや。などと
どうでも良い事に
思いを馳せていたならば
途中から自分が
一体何を探しているのか
分からなくなるという
ハプニングが勃発。

とりあえず
何かを探し続けててみる。

しかしながら
タイムアップとなったその2は

「見つかったらメールシテ!」

と、吐き捨てドロンした。


玄関が閉まるや否
自室に潜んでいた娘達が
ゾロゾロと湧いて出た。


忍法
隠れミノの術か(真顔



というどうでもいい
忍者話はさておき――

不可解な言動で私を困惑させた
影武者その1の見解について 
モモカが私に説明してくれた。







影武者その1は
おっちょこちょい
らしい(真顔