火曜日の夕方――

照り付ける太陽の元で
老体に鞭打ちながら
惜しみなく伸びきった芝を刈る。

スコットランドと言えど

暑い(真顔

その上
夕方と言いつつも
太陽はまだ高い。


流れ出る汗を拭いながら
私は思う。

果たしてこれは
嫁の仕事なのかと。



身体作りの為
毎日ジムに通い
ランニングに励む旦那。

しかし、その仕上げた筋肉を
家族に還元する気はないらしい。


役に立たねぇ
筋肉なぞ
捨ててしまえ。



腹の底で暴言を吐きながら
私は再び作業に専念する――


2時間をも要し
私は芝たちとの戦いを終えた。

小汚くなった己に失笑しながら
シャワールームに向かう。

視界の端に
ランニング・ウエアで
PCに向かう旦那を捉える。

モヤモヤとした疑念が湧くのを
払拭するかのように
私は豪快にシャワーを浴びた。


シャワーを終え
部屋で頭を拭いていると
軽快なメロディーが聞こえて来た。

アイスクリーム・バンである。

耳が悪い老人たちの為なのか
結構遠くに停車しているにも関わらず
まるで目の前にいるのかと
錯覚を覚える程の爆音だ。

すると
旦那の大声が聞こえてきた。


「モモカー!?
チハナー!?
ドコーー?」



私は息を殺し
耳をそばだてた。


「モモカ―?
いないのー?
チハナー?
ドコーー?」



間違いない。


ヤツはアイスが
食べたいんだ(真顔



呼びかけも虚しく
娘達から返事が来る事はなかった。

なぜって

2人とも家に
いないのだから(真顔


このまま
うっかり私がのほほんと
部屋を出た暁には
間違いなくアイスを
買いに行かされる(真剣

私はアイスクリーム・バンの
軽快なメロディーが遠ざかるまで
何をするでもなく


息をひそめ
シャワールームに
籠城した――




その後すぐ
体操教室から帰宅したモモカが
まさかのアイスを
頬張っていたのには
さすがにツボった。