旦那が出張から戻った
次の日の早朝――


私はヤツに
叩き起こされた。









何の話?



私は寝ぼけ眼で
目覚まし時計を覗き込んだ。


4時50分。


嫌がらせとしか言いようのない
旦那の言動に軽く殺意を覚えながら
ツナ缶と缶切りについて考えてみた。

考えている最中も
旦那は私の真横で捲し立てる。


「ドーして
ワタシのランチの
ツナ缶が
キッチンにアルノ!?」

「ドーして
バッグから勝手に
取り出しタノ!?」

「意味が分からナイ!
ドーして!?」





どうでも良くね?




とりあえず
どれ程薄っぺい事案であろうが
頭の回らない早朝であろうが
質問されたからには
答えねばならない。

それが
大人の対応であろう。

私は時系列に沿って
「ツナ缶」と「缶切り」の
流れを旦那に伝えた。


キミがロンドンに行く前
自らそれらを
バッグから取り出し
玄関前に放置していたのを
私はただ
キッチンに運んだだけだ。

ついでに言うなら
缶切りはちゃんと
洗わせて頂きました。




そんな私の弁論に
旦那は面白くなさそうな
表情を浮かべ


「バッグから
取り出した覚えは
ないケドネ☆」



と、捨て台詞を吐いて
寝室から出て行った――




お前はツナ缶と缶切りを持って
ロンドンに行く気だったのか――

などと聞き返す元気もなく
私は再びベッドに潜り込んだ。