亭主関白を気取りたい
お年頃なのだろうか
グラニーの育て方の問題なのか
知る由も無いが
最近目に余るほど
口うるさくなった旦那。

私は「はいはい」と
彼の祖母の如く
身の回りの世話を焼く。

正直、顔を見る度
虫唾が走る今日この頃だが
私は謙虚に
彼の要望に応え続ける。

なぜって

「日本行きの
航空チケット」を
買って欲しいから。


英国においての
「40歳の誕生日」は
日本の成人式に匹敵する
重要な年齢であるがゆえ
盛大なパーティーを行うのは
もはや常識となっている。

そう、私はこの5月に
40歳の誕生日を迎える。

それに合わせて
私は帰国チケットを
手に入れようと
密やかに企てている。

なぜって
スコットランドのこの地で
私がパーティーを催しても
参加者は旦那の一族のみ。

私にとって
何のメリットも無い上に
楽しめる要素なぞ皆無に等しい。

いや
よもやそんなパーティーなぞ
受難以外の何物でもない。

そのパーティー代を根こそぎ
チケット代として消化すれば

①帰国できる
②パーティーをしない言い訳になる

正しく一石二鳥である。



そんなある日――
旦那が私にこう言った。

「7月半ば出発の
航空券を買オウ。
トッテモ安カッタ!」



意味が
分からない。



4月のイースター・ホリデーに
帰国したいんだが?
私の40歳の誕生日と
大ババ100歳の誕生日を合同で
お祝いしようねと
母と約束しているのだが?


「4月の航空券は高いからムリ。
それにワタシは仕事で忙しいから
4月に日本には行けマセン。
7月半ばから8月半ばの
チケットはとても安かったし
ワタシも仕事休めマス!」


突っ込み所満載で
腕が鳴る。



うん。
日本に付いて来てもいいが
私は毎日ジイジのお見舞いの為
病院へ行かねばならない。

そんな中、キミはひとりで
ガンガン日本中を
観光するおつもりか?

そもそも真夏の
大阪の暑さはハンパない。

すると、旦那は

「日本の夏を
堪能したいんデス!」


と、のたまった。

お前
大阪の夏
ナメんなよ。



路上に蜃気楼が見える。
立っているだけで
汗が止まらない。
熱気で息が出来なくなる
故に1日中エアコン必須。

子供ですら日中外で遊ばない。
故にランニングなぞ無理。

蚊がいる。
故に常に痒い。

熱中症で亡くなる方がいる。

等を
私は懇々と彼に語ってみた。


が――


「ダイジョウブ!
暑いのには
慣れてマス!」



大阪の夏――
それはゴールド・コーストや
4月の石垣島とは違うのだよ。
と言うことを
グーグル先生から学んで欲しい。

いや、その前に
真夏の帰国には
大問題が立ちはだかる。

それは、娘達。

10月の帰国時に
汗疹が出来たチハナ。
暑いと言って
外に出れなかったモモカ。

こんな娘達が大阪の真夏に
直撃したならば
――と
考えただけでも恐ろしい。


「ダイジョブ。
ダイジョブ。
慣れる慣れル☆」



子供第一である母心なぞ
この男には一生分かるまい(真顔


そんなこんなでつい先日
旦那が私にこう言った。







なぜ?




私へのプレゼントが
「私の欲しいモノ」から
「己の欲しいモノ」に
取って代わった(殺意

そして勿論
ポルシェは買って貰ってない。