金曜日の夜――

出張から戻って来た旦那が
日曜日の夕方から
再び同じ出張先へと向かった。

どうやら
2週間の出張のようだ(真顔

出張と言っても
土日は休みなのだろう。

が――
私は首を傾げた。

出張って
土日は自宅に
戻って来るもの
なのか?(真顔


いやきっと1週間が
洗濯物の限界なのだろう。



日曜の午後9時――

シャワーを出て
バスタオル1枚で
ナイトクリームを
塗りたくっていると
スマホが鳴り出した。

旦那からの入電である。

両手が使えないので
小指の第二関節で
スピーカーにしてみる。

もしもーし?

すると
なかなかの小声で
旦那が応答した。

『・・・大問題が
起きマシタ・・・』


・・・お前
大問題多いな(真顔

とは口にせず
黙って「大問題」とやらを
訊いてみた。

すると、まさかの

『財布忘れマシタ』

だった(真顔

1週間分のランニングウェアは
完璧にパッキングしていたのに
財布は忘れるらしい(真顔

『きっとワタシのバンの中に
落ちてると思いマス!
今スグ探してキテ!』

※旦那は会社の車で出張に行った

OK!
とりあえず
服着たら探してやるよ。

そう男らしく返答した私に
やはり旦那は癇癪を起した。

『ハァ!?
今スグ探して!
キミの着替えを待つのは
スゴくストレスデス!』



いや
お前のストレスに
私を巻き込むな
(真顔



この寒空の下
バスタオル1枚の嫁に
外へ行けと言うのかね?

凍死を覚悟した変質者として
通報のおそれありだ。

スピーカー越しの雄叫びに
ソファで横になっていた花さんが
何事かとむっくり起き上がる。

同じように
シャワールームへ向かっていた
モモカも足を止め
異様な空気漂うリビングを
半笑いで見据えていた。

とりあえずモモカを捕獲し
旦那の意向(スマホ)を
引き継いでみた。

するとモモカは
アハーン♪とアメリカンに
それを受け取ると
凍てつく大地へと続く扉を開き
漆黒の闇へと消えて行った。

それから3分と経たぬ間に
財布は車内で無事保護された。

通話終了と同時に
モモカが苦言を呈した。









夫がご迷惑を
お掛け致しました。




「あとクレジットカードを
速達で送ってだって。
住所は今から送るってさ」
と、旦那からの伝言を残し
モモカはシャワーへと向かった。

そして、
私は「住所メール」を待った。


30分経過――


1時間経過――


「今」って
一体何時間後を
意味するのかね?



とりあえず
メールを送る事自体
忘れているのではなかろうかと
催促のメールを送ってみた。

すると
旦那からの返信メールが

『今、ホテルで
ゴハン食べてルシ!』



だった事で


芽生えた殺意は
一気に巨木と
化した(真顔




その後、3日経っても
「カード到着したよ」等
お礼のメールは来ていない――