我が家の裏庭に面した新築の家に
ジイサンが越して来たのは
10ヵ月程前の事だった。

夏場はしばしば洗濯物を
取り入れる時などに
見かけたりしたのだが
ジイサンはとてつものなく
シャイなのか


目も合わせて
くれない(真顔



とりあえず
挨拶しようと試みるも
彼は私の姿を捉えるなり
早々に撤収する始末。


人間嫌いなのか?


いや、ただ単に想定外の
アジア人(私)にビビった
だけなのかも知れない(真顔

しかし、よく庭で遊んでいる
モモカからも同様の証言を得られた。

きっとジイサンは
他人と関わり合いたくないのだ。

そんな彼の余生を
我々が邪魔してはならぬ。

と、言う訳で
私とモモカは勝手に彼を
「リチャード」と命名(真顔

これで名前を伺う事なく
彼の話を存分に出来る。


そんなある日――

旦那が、ようやく
「リチャード」を認識した。


「裏手の家
誰か引っ越して来タノ?」

・・・ああ、だいぶ前に。

「誰?家族?」

ジイサン一人だ。
私は彼の事をリチャードと
呼んでいる(真剣

「リチャード、何歳?」

うっかりリチャードと呼ぶでない。
それはニックネームであり
本名ではない(真顔

なんて事は
面倒なので伝える事無く

リチャードは65歳前後。
きっとリタイア組だ。

とだけ旦那に伝えた。

すると、
旦那は「フーン・・・」と
意味深に顎をさすり

「離婚したのカナ?」

と、切り込んで来た。

何やら妄想が
狂おしいまでに暴走したらしい
旦那のおしゃべりは止まらない。


「あの年代に
多いんダヨネ☆
熟年離婚ってヤツ?
リチャードも
その一人カナ?
それにしても退職後に
独り身って
寂しいヨネー☆」





己の身を案じよ
(真顔)