10月初旬――

つまり
まだ車があった頃の話である。


ようやく
「早く帰宅する時は一報入れよ」
という私の要望を
聞き入れてくれたらしい旦那が
夕方4時半に電話を掛けて来た。

「今日は早く帰るから
ご飯の用意しておいてネ☆」

なかなか出来た子で
お母さんは嬉しいよ。
で、何時までに必要なんだ。


「あと10分で
到着シマス☆」



10分で
ご飯が出来ると思うなよ。

いやしかし
金曜は空手の日だ。
実はすでに夕飯の用意は
終わっている。

いつ帰宅してくれても問題ない。
私はなかなか出来た嫁だと
自画自賛してみたりする。


そして報告通り
10分後に帰宅した旦那は
夕飯のチキンを流し込むと
軽快に出掛けて行った。

午後6時――

私は娘達と共に
隣町の空手場へと向かった。

通常我々は2時間のレッスンを
受けているのだが
この日は
1時間で帰宅する事となった。


なぜって――


カギがなくて
家に入れないと言う
SOSを
受け取ったから
(真顔





グラニーとお向かいのリンダが
我が家の鍵を持っているから
借りに行けと助言したにも関わらず
なぜか私の帰りを待っていた男。

シャイなのか。