ようやく静かになった
土曜の夜――
頃合い良く
炊飯器から軽やかな
メロディーが鳴り響く。
夕飯の支度をしようと
腕まくりしながら
キッチンに向かうが
その足はスマホの着信音に
阻まれる。
着信元は旦那。
もう、嫌な予感しかしない。
・・・もしもし?
「今、バス停にいるカラ
~~~にある~~~
~~~~~持って来テ!
今スグ!
バスが来マス!!」
叫びにも似た旦那の声が
無防備な私を捲し立てる。
なんだかよく分からないが
救援物資の催促らしい事には
違いないだろうが
残念なことに「~~~」の部分が
全く理解出来ない(真顔
私の英語力うんぬんはさて置き
一体いつになったら
この男は乳離れしてくれるのかと
溜息が漏れる。
一応
緊急を要しているようなので
間違いがあってはならぬと思い
隣で暢気にテレビを観ているチハナに
スマホを手渡してみた。
「ハロー?ダッダ?
何ー?
・・・What?」
ネイティブでさえそうなるなら
私はきっとあと5回聞き直しても
理解できなかったであろうと確信。
そして間もなく
チハナが鼻息荒く集合を掛けて来た。
「ママ!
アフターシェーブ探すよ!
バスルームだって!」
なんだって!?
「ダッダが今すぐ
アフターシェーブを
バス停まで持って来いだって」
なんだって!?
いや、そもそも
アフターシェーブとは何だ?
とりあえず
私たちはバスルームへ向かい
ターゲットである
アフターシェーブなるものを
捜索する。
が、一向に見付からない。
それもそのはず。
我々は一体何を探しているのか
分かっていないのだから(真顔
しかし、謎めいた使命感に
駆られたチハナは
シャワールームにまで範囲を広げ
捜索に当たる。
いや、待てチハナ。
アフターシェーブとは
一体何だ?
シェービングフォームとは
違うのか?
「知らない。あれじゃない?
ヒゲ剃った後に
使うヤツじゃない?」
・・・それ
そんなに重要?
「・・・さぁ。
でも、それどこで使うのかな?
バスの中で塗るのかな」
我々は一気に興ざめした。
重要性が全く持って見出せない
未知なる物体を捜索させ
バス停まで持って来させようと
思い至ったその心境と意味を
論理的に説明して貰いたい(真顔
すると「ピロン♪」と
スマホがメールの到着を
お知らせしてくれた。
それは、旦那からの
『遅すぎる
バス来た』
という
お知らせだった――
そして次の日――
アフターシェーブが
「髭剃り後に使用する化粧水。
多くは男性用。剃刀負け、
ひりつきなどを防ぐのに使う」
と、知る事となったが
今ではもうどうでも良い
情報である(鼻ほじり
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