12月27日――

コリン(グランパの長男)一家が
親戚一同を招いて
パーリーを開催した。

約束の時間は3時だが
パーリーには
遅れて参加するというのが
スコットランドのマナー(?)。

我々は、3時20分と言う
なんとも良い感じの時間帯に
コリン宅へ到着した。

だがしかし
到着してから10分と経たぬ間に
旦那に1本の連絡が入った。

「今から仕事ダッテ・・・」

つくづく運のない男だな。
と、感銘さえ受ける。

とりあえず
何かつまんでから
仕事に向かおうとした旦那だが


コリンの嫁が
不在の為
何も用意されて
いなかった。



その上
コリン宅4姉妹もなぜか
ことごとく不在。


なぜ「3時に来い」
と言われたのか
謎は深まるばかり。



結局何も食べる事無く
旦那は私達3人を置いて
職場へと向かった。

30分後――

私はある事を思い出し
背筋を凍らせた。

やべぇ。
家の鍵
車の中だ!!


私は自分の車で移動する際は
鍵の紛失を回避する為
車の中に家の鍵を置いておく
癖が付いている。

コリン宅までは
私の車でやって来た。

すなわち、家の鍵は
今グラスゴーか!?

慌てて旦那に電話を掛けた。

「グラスゴーまでは
自分の車で来マシタ。
家の鍵ならホリーの
車の中にあるのを見付けたから
そのままにしてマスヨ☆」

お前、なかなか
出来る子だな!


その場にいた親戚一同も
歓声を上げ彼の功績を称えた。

午後9時――

キース(義妹ジルの夫)が
我々3人を自宅まで
送り届けると志願してくれた。

すると突如
目の前に現れた
無駄にデカイまさかのバスに
我々はたじろいだ。

さすが
バス会社の
御曹司は違うな。


首がもぎ取られそうになる程
粗い旦那のそれとは相反し
惚れ惚れする安全運転を
魅せ付けてくれたキース。

お蔭で道中は
快適な時間を過ごし
自宅前では
マイクロバス横付けという
なんともVIP待遇を味わえた。

そんなキースに
お礼とお別れを伝え
私は家の鍵を取り出す為
自分の車に向かった。

――数秒後

私の断末魔が
静寂に包まれた闇を引き裂く。


まさか
車がロックされて
いるとはな。



ウィンドウ越しに見える家の鍵に
愛しさと切なさを覚えながら
ウチの旦那はやはり馬鹿なんだと
再認識した雨の夜――

お向かいのリンダおばちゃんに
我が家の鍵を預けていて
本当に良かった(真顔