土曜日の昼――

娘達はグラニーに連れられて
隣町のフェアへと出掛けた。

そんな3人を見送った後
私は1人気ままに
道場へと向かった。

2時間の空手レッスンから
帰宅すると


家中が
焦げ臭かった。



どうやら我が家の坊ちゃんが
何かしら仕出かしたらしい。

焦げたフライパンを見下ろしながら
ランチ位作って置けば良かったと
自責の念に駆られる私と――


一向に
見当たらない旦那。



今夜はランニング・クラブの
クリスマス・パーリーがあるので
それに向けて充電中なのであろう。


午後6時。
のっそり起きて来た旦那が

「コレ、お願いしマ~ス♪」と

ジーンズのアイロン掛けを
しれッと要求してきた。


せめて
パスタを茹で始める前に
頼んで欲しかった。



しかし私は出来る嫁なので
パスタが茹で上がるまでの
8分間でアイロン掛けを終えた。

楽しみにしていた
「うしおととら」を観ながら
娘達と
「たらこスパゲッティ」を頬張る。

なんとも至福の時である。


ただ――

「コレ、似合ってル?」

「服に猫の毛が付いてるから
コロコロで取っテー」

「ヒゲ剃った方が良いカナー?」

といった
旦那の合いの手さえ
入らなければな。


「ハッ!
バスの時間デス!
イッテキマス!!」


そう言って
玄関に向かった旦那だが

「ケータイがナイ!!」と言う
叫び声が聞こえるまでに
そう時間は掛からなかった。

いつもの事なので
娘達も動じない。
とらちゃんに夢中だ。


「オイ!!
ケータイがナイ!!
ミンナで手分けして
探すンダ!!」



お前は警部か。


と、心の中で呟きながら
「靴を脱いで自分で探す」
と言う選択肢がない彼の態度に
奥歯を噛み締めた。

もうすぐやって来る
「旦那の長い冬休み」が
恐怖でならないと感じた
師走の夜――