午後9時――
突如玄関のチャイムが鳴った。
北国の夏は
まだまだガッツリ明るい
時間帯であるものの
一般的に夜9時といえば
人様の家を訪問するには
躊躇する時間帯ではなかろうか。
こんな夜遅くに
一体誰だ?
私はこっそりと
窓から玄関を覗き見た。
ソコには
見知らぬ男女2人組み。
察するに夫婦であろう。
いやいや、ちょっと待て。
シャワーを終えたばかりの
つまりスッピンの私は
この見知らぬ男女と
今から対峙せねばならぬのか。
怪しいセールスでない事を
祈りながら
私は薄っすらと扉を開けた。
ハロー・・・?
訪問者は満面の笑みを向け
私にこう言った。
「ハーイ!ここ
58番地よね?」

いいえ
56番地です。
という言葉を激しく飲み込み
私はこう伝えた。
・・・58番地は隣ですが?
「OH!そうなの?
じゃ、隣に行くわね☆
ベッドを譲って
くれるらしいの。
じゃ、バーイ!」
そう言って
夜9時の訪問者は
颯爽と立ち去って行った。
コノ表札

分かり辛いか?
思えばちょいちょい
「58番地」と
間違われる我が家。
年に数回隣の知人が
我が家に押しかけるなぞ
今やご愛嬌。
そんな「58番地」に住んでいた
おジイさんの葬式日
喪服集団がうっかり我が家に
やって来たのも
今では良い想い出である――
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