■登場人物■

グラニー 
旦那の母親(姑)

ジル 
グラニーの最愛の次女(義妹)

ダッダ 
グラニーのご自慢の長男(旦那)



日曜日――
グラニーから
電話が掛かって来た。

「ホリー?
あなた23日何してるの?
ジルと一緒にエジンバラへ
お買い物に行くんだけど
あなたも行かない?」


面倒臭いな。


クリスマス・ショッピングには
毎回この3人で
街へと繰り出すのだが
この季節外れの
「ショッピングのお誘い」には
申し訳ないが乗り気がしない。

なぜって
旦那がおカネを
くれないから(真顔


そんな私が
ヒトの買い物にノコノコ
付き合ったりしたならば
単なる荷物持ちと
化すだけであろう。

鼻をほじりながら
生返事を繰り返す私に
グラニーは意気揚々と
こう提案した。

「チハナとモモカも連れて
エジンバラ・ダンジョンに
行こうと思うの!」


ダンジョン!
それはいいな。





【エジンバラ・ダンジョン】

スコットランドの血塗られた暗黒の歴史を遡る。
殺人鬼バークとヘアの身の毛もよだつ実話から
エジンバラの大火事、拷問、伝染病の流行など
ここで見るものはすべて本当の出来事。
俳優による実演やショー、不気味なライド、
インタラクティブな特殊効果で苦痛、恐怖、
拷問、そして死をテーマにした
スリル満点の体験できる。




長年行きたいと思っていた所だ。
さすがの私もテンションが上がる。

よし、この際ジルの荷物持ちでも
何でもしてやろうではないか。

私はゲンキンにも即決で快諾した。


そしてグラニーはこう続けた。

「そうそう、あなた。
ジルのヘン・パーティーに
出席しないのね?」


話はジルの「ヘン・パーティー」
(独身最後の夜を女性達のみで
楽しむパーティー)へと移った。


ええ、まぁ・・・
まず3泊4日も
家を空けれませんから・・・

そう、まず「パーティー」が
3泊4日という時点で
意味が分からない。


「まぁ・・・
ダッダはスタッグ・パーティー
(男達のパーティー。
こちらはスペイン4泊5日)
に行くのに・・・

でも、1泊で帰る人も
いるみたいだから
ホリーも行ってみたら?
私がチハナ達の面倒みるわよ☆」


義妹と
その友人達(27歳)と
一体私は何を話せば
良いのですか?



いえ・・・
ホントにお構いなく・・・

「本当に?
ジルが残念がるわぁ」


いや
ジルは何とも
思わないだろう。



しつこいセールスに
遭った時と同じような
ジリジリ感が私を襲う。
しかし
そんな嫁の心姑知らず。
彼女はこう続けた。

「そうそう
10月にはチック・パーティーを
開催するんだけど
モモ・ハナも参加させてね☆」

チック・
パーティー!?



初耳のそのワードに
私は動揺を隠せなかった。

もしやそれは
「ヘン(雌鳥)」に対抗しての
「チック(ヒヨコ)」
すなわち
「子供達のパーティー」と
言う事でしょうか?

「そうそう(笑)
子供達が沢山来るそうよ~」


前夜祭
多くね?
ロイヤル・ファミリーも
ビックリだな。



果たしてジルは
一体何に
なろうとしているのか。
はたまたこれ位は
スコットランドでは
普通なのか。

なんだかモヤモヤしたまま
私は電話を切った。

そんな電話に気付いた旦那が
リビングにやって来た。

「グラニー、何ダッテ?」

いや、23日に
ジルとエジンバラに行くから
一緒に行かないかという
お誘いだったよ。


「エジンバラ?ナゼ!?」


いや、なぜだろうな。
こっちも唐突で
驚いていた所だ。


――私はふと思った。

もしやこれは
私への誕生日プレゼントなのでは
なかろうかと――

「ダンジョンに行きたい」と
以前もらしたのを
グラニーは
覚えていたのではなかろうか。

数年前
旦那をダンジョンに誘った時
「チケットが高い!」と
断わられた事を思い出すと
このグラニーの
男前なサプライズは
なんとも私の胸をときめかせた。

「ああ、そうか――」

旦那がニヤリと
不敵な笑みをもらす。

「多分グラニーは
私が次回参加する
ウルトラトレイル・
デュ・モンブラン
が心配で
ホリーにレースの事を
色々訊こうと
してるんデスヨ☆」



ヨーロッパアルプスの最高峰モンブランを
取り巻くフランス、スイス、イタリアにまたがる
山岳地帯を走るトレイルランニングの大会である



それ玄関先で
済む話じゃね?



喉まで出掛けたその言葉を
とりあえず丸呑みしてみる。

ちょっとゴメン。
全く意味が分からない。

すると旦那は
得意げにこう言った。


「3日前にそのレースが
どれほど過酷かグラニーに
伝えた所だったんダヨね。
トテモ心配していたみたいだから
ホリーに相談したいんじゃナイ?
ホラ、ホリーなら
止めてくれると思ってサ☆」



香ばしいまでに
めでたいな。