◎崩壊編◎


飲み会で
私はYちゃんに謝った。


Yちゃん、私はキミに
謝らねばならぬ事がある。

この間電話をくれたというのに
中途半端になって
申し訳なかった。

実はあの時
動物病院から車で
マロを連れ帰っていた
途中の赤信号で
電話に出てしまったんだ。

青信号に変わって動揺した私は
「運転中」と言う単語が
出てこないまま

「車動き始めたから
電話切るねっ」

とか意味不明な事を
抜かしてしまった。

その後
助手席の母に助けを求め
電話を代わったものの
うっかり母まで

「車動き始めたので
失礼しますー」

とただ単に
リピート・アフター・ミーして
電話を切ってしまった事を
ここでお詫び申し上げたい・・・


「大丈夫☆
なんとなく意味は分かった」



◎独り言編◎


ことごとく
コンビニに入り損ねたので
近所にある
小型スーパー「ライフ」で
ジイジが食べる
「コーヒーゼリー」を
調達する事にした。

夕方5時の
かき入れ時だと言うのに
レジが2つしか開いておらず
モノの見事に
長蛇の列が出来ていた。

私は幾分イラダチを覚えた。

レジ2つしか
開いていないだと?

すると
サービスカウンターから
陽気なおば様の声が響いた。


「スミマセーン!
今開けます!」



まさかの独り言に返事が来た。
さすがの私も
ぎこちない笑みを漏らす。

おば様のお陰で思ったより早く
レジを終える事が出来た我々。

とりあえず私は一刻も早く
この場を立ち去りたい一心で
ガムシャラに出口を目指す。

――が
そんな母の心中なぞ省みず
チハナがピタリと足を止めた。

するとおもむろに
サービスカウンターに
陳列していた「北海道ぷりん
(あんこ添え)」を指差した。

「ママ、これも買って行こうよ。
ジイジ、あんこ好きだし」

チハナもたまには
まともな意見を言うのだなと
私は少しばかり感心ながら
その1つを手に取った。

3人でカウンターを覗き込む。
が、やはり誰もいない。

こっちも人いないねぇ。

すると、レジから声が響く。


「スミマセーン!
今行きます!」



あの、陽気なおば様が
再び私の独り言に
返事をしてくれたのだ。

自分の声がデカイという事に
ようやく気付いた39歳春――



◎不条理編◎


地元のデパ地下に勤めている
Yちゃん。
夕飯調達も兼ねて
母・娘達と共に会いに行った。

その後
カフェでお茶でもしようと
デパ地下を徘徊していると
突如後ろから腕を掴まれた。

「ホリーやんな!?」

そこには実家が近所な上
小・中・高と同じ学校に
通っていたNちゃんが
物凄い形相で立っていた。

Nちゃん!?
久しぶり!
ここで働いてたん!?

私はまたしても
大声だったらしく
そっとNちゃんに注意される。

「そうそう
ここで働いてんねん」

うわー、久しぶりだが
なんだよNちゃん。
全く変わらず可愛いな
こんチキショー。

「いやいや、
ホリーも変わってないから」

我々は懐かしさに
お互い目を細めたものだ。

そしてNちゃんに
そっとカフェの場所を
教えてもらった(真顔

次の日
興奮冷めやらぬ私は思わず
「デパ地下再会物語」を
看護師さん達に話した。

「へぇ、同級生がお2人も
デパ地下で
働いていたのを見つけたら
テンション上がりますよね♪」

「皆さん、この近くに
お住まいなんですか?」

そうですね。
皆近所に住んでます。

ちなみに
我々の高校はすぐソコでした。

私は病室の窓から望める
我が母校を指差した。

「ええ!?
ホントですか!?」

「驚きです!
そうだったんですね!?」

驚愕する看護師さん達に
いささか不条理を覚えながらも
現在の我が母校の
レベルの高さを知ると
納得せざるを得ない
今日この頃。


在校生の皆さん。
なんだか
ごめんなさい。



「ピンキリ」という単語が
私の脳裏を横切った
昼下がりでもあった――