前回、行内で発覚した
使途不明金を
うっかり私の略奪と勘違いした
おばちゃん行員。
今回もそんな彼女とのやり取りを
お届けしたいと思う。
◎ネット・バンキング◎
入金が多岐に渡って
あまりにも多すぎる上に
毎回何かがややこしい
と言うおばちゃん行員の
漠然とした偏見にて
「ネット・バンキング」開設を
余儀なくされた。
「じゃ、ここにパスワード書いて。
私が入力して開設してあげる」
と、一遍の紙切れと
ペンを手渡された私。
いや、ここ仕切りもない
窓口ですが本気ですか?
セキュリティー的に
釈然としない所が残るものの
背後に続くこの長蛇の列が
如何せん私を駆り立てる。
そんな我々のやり取りを
見付けた上司であろう
男性行員が慌てて私を
応接室へ連行した。
普通、そうですよね。
危うくおばちゃん行員に
私のパスワードが
筒抜けになる所だった。
◎ロシアン・ルーブル◎
常時テラーが2人いる
地元の銀行だが
今回もうっかり
おばちゃん行員にかち合った。
「今日は何かしら?
簡単な作業で終わる
仕事にしてね」
と、おばちゃん行員から
先に釘を刺される始末。
今回のミッションは
チハナの修学旅行用お小遣い代
2,000ロシアン・
ルーブルの調達。
(約6,000円)
おばちゃん行員は
あからさまに顔を曇らせた。
「ロシアのお金?
そんなのないわよ。
換金所とかに行った方が
いいんじゃない?」
いや、ここ銀行ですよね?
金銭流通の中枢ですよね?
「まぁ、貴方の為に
一応調べてあげるわ・・・
・・・・ああ
なんか大丈夫みたい」
ですよね。
「でも2~3週間
掛かるんじゃない?
今この銀行には
ロシアのお金なんてないし」
まぁ
そうですよね。
とは口にせず
ではよろしくお願いします。
と、私は笑顔で持参したメモを
おばちゃん行員に手渡した。
そのメモには手書きで
「2,000 Russian Roubles」。
なぜって「R」2つ
「L」1つの発音を
完璧にこなす自信がなかったから。
おばちゃん行員が
パソコンを打ち込み始めた。
「換金って
結構面倒な作業なのよね。
ほら、レートとか色々あるし」
ですよね。
でもそれがあなたの仕事ですし
頑張って下さい。とも言えず
不安定な笑みをこぼすしかない私。
すると、横にいた
もうひとりの若いテラーが
何かに気付き
我々の間に介入してきた。
「それ、昔のやり方です。
今は新しいシステムに
切り替わったんで
結構簡単に換金できますよ」
ですって。
目にも留まらぬ速さで
おばちゃん行員のパソコンを
打ち込み始めた若い行員と
手持ち無沙汰になった
おばちゃん行員。
彼女にとっては
いつもの光景なのであろう
気にする様子もなく
私と無駄話を始めた。
「ホリーさん
ロシアに行くの?」
いや、娘の修学旅行が
モスクワなんですよ。
「モスクワ?
こんな時にモスクワ?」
はぁ、私もいささか
心配なんですが
モスクワは何気に
安全みたいですよ。
「いつ出発?」
3週間後です。
「そう、それなら
お金も用意できそうね。
間に合わなかったら
大変ですものね」
などと、話している間に
若い行員の作業は
ほぼ終了したらしく
「おいくら分ご所望ですか?」と
尋ねてきた。
「40ポンド分」と答えるべきか
「2,000ロシアン・ルーブル」と
答えるべきか
そんな事を迷っている間に
おばちゃん行員が涼しい顔で
2,000ポンド分よ。
(34万円)
と、回答した。
うっかり
「修学旅行のお小遣い」により
家計が火の車になる所だった。
今後も
おばちゃん行員が繰り広げる
破天荒な言動を
期待して止まない。

↑換金をお願いした
次の日には
受け取ることが出来た
「ロシアン・ルーブル」。
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