チーとモー④

◎バターカップのまき◎

ホリー絵日記


長い冬が終わり 
待ちに待った春が訪れました

まるで 春の妖精が

「ピーッ!春ですよ!」

と 宣言したかのように 
土の中から にょきにょきと 
スノードロップの芽が伸びてくる

桜のつぼみが 
むくむくと 大きくなる

そしてまもなく 野原一面が
デイジーとバターカップで 
うめつくされる

いっぴきのミミズが 
大きなあくびをしながら
ぽこんと 土の中から 
顔を出しました

「ふわぁ・・いい天気だなぁ」

ミミズは太陽にむかって 
のびをしました

「ミミズさん こんにちは」

振り向くと 大きないきもの

「きゃっ」

ミミズは小さくさけんで 
土の中へと 逃げ込みました

「モー ミミズさんがいるの?」

どうやら その子の名前は 
モーというらしい

ミミズはおそるおそる 
顔を出しました

「うん さっきまでいたんだけど 
びっくりしたみたいで 
かくれちゃった」

残念そうにそういったモーは 
バターカップの茎をつなげて 
小さなリングをつくりました

「これ ミミズさんの かんむり
おどろかせちゃった おわびだよ」

「・・・ありがとう・・・」

ミミズは照れながら おずおずと 
黄色いかんむりを 受取りました

「あ ミミズさんだ!」

モーが そういうと

「ミミズさん でてきた?」

と となりにいた チーも 
ずいっと 土に顔を近づけました

「こんにちは ミミズさん
あたし チー こっちは モー」

ミミズは おおきな いきものを
かわるがわる みつめました

そして さいごに 
黄色いかんむりを みつめました

「ありがとうございます・・
すてきな かんむりですね」

はずかしがり屋のミミズは 
顔を赤らめながら 
それを頭に のせました


ホリー絵日記


「わー!ぴったり!」

と モー

「よく にあってるよ!」

と チー

するとミミズは 
もじもじしながら 
こういいました

「あ あの・・・ 
これのおれいに
すてきな おまじないを 
おしえてあげます」

「おまじない?」

チーとモーは 
顔をみあわせました

「え、ええ・・・
そのバターカップを
あごのしたに あてて
ねがいごとをすると 
ねがいがかなうんです」

「ほんとう?おもしろそう!」

ふたりは さっそく 
足元に 咲いている
バターカップを 
プチンと 摘み取ると
あごの下に かざしました

「つくしのこ でてこい!」

モーが そうさけぶと同時に 
ニョキ!

すると つぎから つぎへと 
つくしのこが あたり一面 
ニョキニョキニョキ!

「うわぁ、すごい!
つくしが いっぱい!」

チーとモーは おおはしゃぎ

「チーも なにか 
おまじないしてよ!」

「うん!じゃ、チーは 
ちょうちょに のりたい!」

すると 野原の向こうから 
白い大きな蝶が ふわ~り

「わぁ すごい!
これ ほんとうに のれるの?」

ミミズは
「だいじょうぶですよ」と 
にっこり

ふたりは おそるおそる 
蝶の背中に のりました

すると ふわ~り

「すごい!とんだ!」

風にゆられて 
ひらり ふわり ゆらり

チーとモーは はじめての 
空の散歩に でかけました

どこまでも続く 
緑色のじゅうたんに
色とりどりの 小さな花が
蝶といっしょに 
ゆらり ひらり

ふと モーがつぶやきます

「あれ?ミミズさんは?」

「たいへんだ!ミミズさん 
おいてきちゃった!」

チーとモーは いそいで 
もといた場所へと
舞い戻りました

ミミズは 少し さみしそうに
ふたりが飛んでいった
空をながめていました

「ミミズさーーん!」

チーがよびました

「ごめんね ミミズさん
おいてきぼりに しちゃったね
さぁ いっしょに のろう!」

モーが手を さしのべます

「で・・・でも 
ぼくは むりです・・・
からだが かわいちゃったら 
しんじゃうし・・・」

ミミズはそのまま シュンと
だまりこんで しまいました

すると モーは 
バターカップを 
あごの下にかざし

「ミミズさん!
ちょうちょに な~れ!」

すると ポン!

さきほどの ミミズは 
美しい黄色い蝶へと 早代わり

「これでいっしょに 
おそらの さんぽができるね」

モーは にっこり

チーも にっこり

恥ずかしがり屋の ミミズも
はじめての空に にっこり

ふんわり ふわふわ
ひらひら ひら~り

3人は 日が暮れるまで
空の散歩を楽しみました


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