チーとモー②
◎ゴールデン・ポットの巻き◎

仲良し姉妹のチーとモー
ぽかぽか春の日差しの中
お母さんから
ひまわりの種をもらいました
チーとモーは早速庭に出て
太陽の光が良く当たる
花壇の真ん中にそれを植えました
「はやく芽でないかなぁ」
と、チー
「ちゃんと忘れず
お水をあげれば
すぐに芽は出てくるわよ」
と、お母さん
2人は毎日ひまわりに
お水をあげることを約束しました
でも、次の日は雨
「なぁんだ 雨ふっちゃった」
と、モー
「ひまわりさんに
お水あげれないね」
と、チー
「それにお外にも
あそびにいけないねぇ」
2人はつまらなそうに
言いました
するとお母さんがふくれっつら
「あら、雨は大切なのよ?
雨が降らなきゃウサギさんだって
小鳥さんだって生きていけないし
木も草も花も全部枯れちゃうのよ」
お母さんがそう言うと
2人は面白くなさそうに
ほっぺたを膨らませました
「そんなのわかってるよ
でも やっぱり
雨がふると つまんないよ」
と、チーは口をとがらせました
「じゃ、お母さんが
いい事教えてあげる」
その言葉に
チーとモーは耳がぴくり
「雨が上がれば虹が出るわよね?
その虹が出ている出発点には
ゴールデン・ポットが
埋まっているのよ」
「ゴールデン・ポット!?」
2人は声をそろえて
繰り返しました
「そう、ゴールデン・ポット!
金(きん)のお宝が
たくさん詰まったツボが
埋まってるんだって」
「おたから!」
チーとモーは目を輝かせました
「はやく虹でないかなぁ」
「ゴールデン・ポット
さがしにいきたいね」
2人はワクワクしながら
灰色の空を見上げます
すると
雲の間から一筋の光
待ちに待った太陽が
ひょっこり顔を出したのです
「虹だ!」
「なのはなばたけから
虹がでてる!」
チーとモーは スコップを掴み
長靴を履くと 大急ぎで
玄関を飛び出しました
「ゴールデン・ポット
さがしにいってくるね!」
「どこへ いそいではるの?」
羊牧場に差し掛かったところで
頭の上から誰かさんの声
見上げると 大きなツバメ
チーとモーは息を弾ませながら
「ゴールデン・ポット
さがしに いくの!」
と 遠くの虹を指差しました
「ゴールデン・ポット?
それは面白そうやな。
ウチが連れてったるわ」
ツバメはそう言うと
2人に背中をさしだした
「でもって2人は無理やな。
1人ずつやで」
その言葉を聞いて
チーとモーはにらみ合い
「チーがのる!」
「モーがのる!」
と、ケンカを始めました
すると あらら?
虹はどんどん薄れ行き
とうとう跡形もなく
消えてしまいました
「ゴールデン・ポットは
また今度っちゅうことやな」
ツバメは面白くなさそうに
その場を飛び立って行きました
それからというもの
2人は毎日
雨が降るのを待ちました
「虹でないかなぁ?」
「ゴールデン・ポット
さがしにいきたいね」
そして
3日が過ぎた頃
晴れているというのに
ぽつぽつと雨が降って来ました
「おてんき雨だ!」
「きつねのよめいりだ!」
2人は玄関に用意されたままの
スコップを握り締め
一目散に飛び出していきました
すると空には
大きな虹と小さな虹
「ダブル・レインボー!」
「はじめて みたね、モー」
「うん。すごく きれいだね」
「あ、ジェームスおじさんの
ぼくじょうから虹がでてるよ」
「いそげ!」
2人は虹の出発点を
目指して走り出しました
しばらく行くと
目の前にポコポコとポニー
「そんなに急いでどこ行くのよ」
「ゴールデン・ポットを
さがしにいくの」
と、チー
「ほほう それは興味深いね
私も参加させておくれよ」
ポニーはそう言うと
2人を背中に乗せて走り出しました
パカパカと軽快な音が
辺り一面に響き渡ります
「ところでどっちに
行ったらいいんだい?
大きい虹の方?小さい虹の方?」
「おおきい虹!」とチー
「ちいさい虹!」とモー
2人はムッと顔をしかめ大喧嘩

「おおきい虹のほうが
おおきい おたからだもん」
「でも ちいさい虹のほうが
くっきりはっきりみえてるもん
ぜったい いっぱい おたからが
はいっているもん」
すると あらら
「お2人さん
もう喧嘩をする必要は
ないみたいですよ」
と、呆れ顔のポニー
そう またしても虹は
消え失せてしまいました
春のポカポカ陽気の中
がっかり顔のチーとモーは
窓辺で空を眺めていました
「また 雨ふるかなぁ?」
「虹 またでるかなぁ?」
「まぁまぁ2人とも
こんなにいい天気だというのに
おうちで雨乞い?
せっかく暖かくなってきたんだから
外で遊んできたらどう?
丘の上にスイセンがきれいに
咲いているわよ」
お母さんにうながされ
2人はしぶしぶ丘を登りに
行きました
黄色や白色のスイセンが
咲く丘のてっぺんまでは
もうすぐです
のろのろと歩くチーとモーを
追い越してミツバチたちが
あわただしく巣に帰っていきます
「どうしたんだろう?」
そう思った2人の上を
ゴゴゴゴゴと
低い音がとどろきます
見上げると
先程の穏かな青空とは
うってかわり灰色の重たい雲が
辺り一面をおおいつくしました
ぴかっ
青白い光が雲の間を駆け抜けました
「きゃ!カミナリ!」
チーは両手で耳をふさぎます
「こわいよぉ」
モーはあわてて
おへそをかくします
「はやく にげなきゃ!」
2人は丘の上にたつ
大きなハルニレの木の下に
飛び込みました
その瞬間
大きな雨粒がハルニレの枝を
咲き誇る水仙を ミツバチの巣を
容赦なく叩きつけました
「すごい 雨だね」
「カミナリおちたり
しないかなぁ」
モーはそう言って
おへそを覗き込みました
どれくらいの時間が
経ったのでしょう
雨足が弱くなったと同時に
灰色の雲の間から
まばゆいばかりの光が
差し込んできました
そして今までに見た
どんなそれよりも
美しい七色の虹が姿を現しました
2人は 息を飲みました
「モー 虹だよ・・・」
「すごくきれいな 虹だね」
しばらくの間
2人はその虹に見とれ
丘の上で佇みました
次の瞬間 チーが
「あ!うちの庭!」
丘の下にある家を指差しました
「ほんとだ!うちの庭だ!」
モーもそれに気付き
目を輝かせました
そう
その虹は チーとモーの住む家の
庭先から空高く伸び
見事なアーチを作り出していたのです
「ゴールデン・ポットは
ウチの庭だよ!」
2人は滑る様に
丘を駆け降りていきました
息を弾ませながら
チーとモーはゲートをくぐり
裏庭へと急ぎます
目の前に飛び込んできたのは
沢山の 小さな 小さな
双葉―――
2人が植えた ひまわりの種が
ひっそりと芽吹いていたのです
チーとモーは黙って
双葉を見詰めます
「そっか ひまわりさん
芽をだしたんだね」
チーは嬉しそうに にっこり
「ゴールデン・ポットは
ほりだせないね
ひまわりさん がんばってるもん」
モーも 思わずにっこり
「お水あげるの
わすれてて ごめんね」
「あしたからは ちゃんと
お水あげるからね」
「たくさん雨ふってよかったね」
2人は空を見上げます
そこには もう
虹はないけれど
夏になれば
こんじきに染まった見事な花を
見上げる事が
出来るのでしょう

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